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2026.08.30カウンセラーの記録

「難しいと思うんですけど」が口癖だった40代男性が、3ヶ月で真剣交際に進むまで

「40代なので、難しいと思うんですけど」。無料相談の席で、彼は何度もそう言いました。
その3ヶ月後、彼は自分から申し込んだ女性と真剣交際に進みます。

彼が無料相談に訪れたのは、とても暑い日の午後でした。

待ち合わせ場所に現れた彼は、こんな暑い日にもかかわらず、きちんとジャケットを着ていました。真面目そうな人だな。それが、最初の印象でした。

ただ、とにかく暑そうでした。額には汗がにじみ、席についてからもなかなか汗が引きません。

「暑いですよね。上着、脱いじゃいましょう」

そう声をかけると、彼は少し申し訳なさそうに笑いました。

冷たいコーヒーを頼んで、すぐには婚活の話をしませんでした。仕事のこと。休日のこと。最近の暑さのこと。少し雑談をしながら、彼の汗と緊張が引くのを待ちました。

しばらくすると、ようやく表情が柔らかくなってきました。そこで私は聞きました。

「今日は、どうして無料相談に来ようと思ったんですか?」

彼は少し考えてから言いました。

「結婚はしたいんですけど……
難しいと思うんですけど」

何を聞いても「難しいと思うんですけど」

この日、私はこの言葉を何度聞いたか分かりません。

  • 「40代なので、難しいと思うんですけど」
  • 「女性と話すのもそんなに得意じゃないので、難しいと思うんですけど」
  • 「今から始めても、難しいと思うんですけど」

何を聞いても、「難しいと思うんですけど」がついてくる。

でも、彼の話を聞けば聞くほど、私は不思議に思いました。なぜ、この人はこんなに自信がないんだろう。

私が見ている彼と、彼が見ている「自分」

正直に言えば、彼のスペックは全然悪くありませんでした。

仕事はきちんとしている。収入も安定している。身だしなみにも気を遣っている。話していても横柄なところはなく、むしろ穏やかで、相手に気を遣える。真面目で誠実な男性です。

結婚相手として見たときに、「この人は婚活が難しいだろうな」と感じるような男性ではありませんでした。

それなのに、本人だけが自分のことを「僕では難しい」と思っている。私が目の前で見ている彼と、彼自身が見ている「自分」との間に、大きなズレがあるように感じました。

だから私は、その日、婚活のテクニックの話をする前に、一つのことを知りたいと思いました。なぜ、この人はここまで自信を失っているんだろう。

自信は、一度に失われたのではなかった

そこから、少しずつ話を聞いていきました。これまでの恋愛。うまくいかなかった経験。女性から断られた経験。自分なりに頑張っても、報われなかったと感じたこと。

年齢を重ねるにつれて、「今さら自分を選んでくれる人なんているのだろうか」と思うようになったこと。

本人は淡々と話していました。でも、一つひとつの経験が、少しずつ彼の自信を削っていったのだと思います。

何か一つ、大きな出来事があったわけではない。小さな失敗。誰かに言われた何気ない一言。周りと自分を比べた瞬間。そんなものが積み重なって、いつの間にか、「どうせ自分には難しい」という答えを、始める前から出すようになっていた。

「難しい」は、自分を守るための言葉だった

もしかすると、「難しいと思うんですけど」という言葉は、彼が自分を守るために身につけた言葉だったのかもしれません。

最初から期待しなければ、傷つかない。申し込まなければ、断られない。好きにならなければ、振られない。

「どうせ難しい」と思っていれば、結果が出なくても、「やっぱりそうだった」で済ませることができる。

私は彼に聞きました。「じゃあ、結婚したくないんですか?」

彼は少し黙りました。冷たいコーヒーのグラスに視線を落としながら、静かに言いました。

「……いや、できるならしたいです」

その言葉を聞いて、彼が本当に言いたかったのは「難しい」ではないんじゃないかと思いました。

本当は、「またうまくいかなかったら怖い」なのかもしれない。「また傷つきたくない」なのかもしれない。

それでも、「本当は誰かと一緒に生きていきたい」という気持ちは残っている。だから、暑い中ジャケットを着て、無料相談まで来たんだと思います。

「まず3ヶ月、やってみませんか」

私は彼に言いました。「難しいかどうか、今決めなくていいんじゃないですか」

そして、「まず3ヶ月、やってみませんか。3ヶ月やって、それでも難しいと思ったら、そのとき一緒に考えましょう」

彼は少し考えていました。そして、「……それなら、やってみようかな」と言いました。こうして、彼の婚活が始まりました。

最初にしたのは、彼を別人にすることではありません。プロフィールを一緒に作る。写真を整える。服装を見直す。女性からどう見えるのかを考える。お見合いで何を話すのか。LINEをどう返すのか。一つずつ、一緒に準備していきました。

彼はとても真面目でした。こちらから伝えたことも、きちんと聞いてくれます。ただ、やっぱり出てきます。

「この服、僕には難しいと思うんですけど」「ちゃんと話せるか、難しいと思うんですけど」

申し込みボタンが、押せない

活動を始めた頃から、彼にはずっと伝えていたことがありました。「プロフィールを見て、気になる方がいたら、自分から申し込んでくださいね」

でも、彼はなかなか自分から申し込みませんでした。こちらから「この方、いいなと思わないですか?」と聞くと、「素敵だと思います」とは答えます。でも、そのあとには必ず、「でも、僕には難しいと思うんですけど……」が続きました。

ここにも、彼の自信のなさが表れていました。申し込んで断られるのが怖い。特に、「この人、素敵だな」と思った女性であればあるほど怖い。期待してしまうからです。だったら、最初から申し込まない。そうすれば、傷つかなくて済む。

「難しいと思うんですけど」という口癖は、言葉だけではなく、彼の行動にも表れていました。

私は何度か伝えました。「申し込まなければ、お断りもされません。でも、何も始まらないですよ」

ただ、無理やり申し込ませることはしませんでした。婚活は、カウンセラーに言われた相手と会うことが目的ではありません。自分自身で「この人に会ってみたい」と思って、一歩を出すことも大切だからです。

一人に断られたことと、あなたに価値がないことは別

活動を始めれば、もちろん、いいことばかりではありません。お見合いをしても交際に進まないこともありました。彼がいいと思っても、相手からお断りが来ることもありました。

そのたびに、「やっぱり難しいですよね」という言葉が出てきます。そんなとき、私は何度も伝えました。

一人に断られたことと、
あなたに価値がないことは別ですよ。

婚活をしていると、一回のお断りを、自分そのものへの不合格通知のように受け取ってしまう人がいます。

でも、お見合いは採用試験ではありません。どちらが上でも、下でもない。合うか、合わないか。それだけです。

100人全員に好かれる必要なんてありません。結婚する相手は、一人です。その一人と出会えればいい。

自分から、申し込んだ

そんな彼が、ある日、自分から一人の女性に申し込みました。プロフィールを見て、本当に会ってみたいと思った女性でした。

でも、やっぱり彼は言いました。「この方、すごく素敵なんですけど……」そして少し間を置いて、「僕には難しいと思うんですけど」

私は、「じゃあ、どうします?」とだけ聞きました。彼はしばらく考えていました。そして、「……申し込んでみます」と言いました。

画面の申し込みボタンを一つ押す。婚活をしている人からすれば、それだけのことかもしれません。

でも、彼にとっては違いました。「どうせ断られる」と思って何度も止まっていた人が、それでも「会ってみたい」という自分の気持ちを選んだ。私は、この一歩は決して小さくなかったと思っています。

そして——お見合い成立。彼自身が「僕には難しい」と思っていた女性が、「会ってみたい」と返してくれたのです。

もちろん、この時点では、まだ何も始まっていません。でも、彼にとっては一つの小さな成功体験になりました。自分が勝手に「無理だろう」と思っていたことが、やってみたら違った。

お見合い当日。彼は緊張していました。でも、逃げませんでした。結果は——交際成立。初回デートへ進むことになりました。

「難しい」が「どうしたらいいですか」に変わった

デート前、彼から相談がありました。「何を話したらいいですか?」

私は、この言葉を聞いたとき、少し嬉しくなりました。以前の彼だったら、「ちゃんと話すのは難しいと思うんですけど」だったはずです。

でも、「難しいと思うんですけど」が、「どうしたらいいですか?」に変わっていた。

似ているようで、この二つは全く違います。「難しいと思うんですけど」は、できない理由を探す言葉。「どうしたらいいですか?」は、できる方法を探す言葉です。

私は彼に伝えました。「面白い男になろうとしなくていいですよ」「彼女を楽しませなきゃ、と思わなくていい」「彼女のことを知ろうとしてください」

会話は、才能だけではありません。相手の話を聞く。興味を持つ。少し質問する。自分のことも話す。そして、また相手に返す。彼はそれを一つずつ実践していきました。

初回デートが終わったあと、彼から連絡が来ました。

「思ってたより、普通に話せました」

この一文を見たとき、私は少し笑ってしまいました。彼にとっては、ただ会話ができたというだけではありません。ずっと「自分には難しい」と思っていたことが、やってみたらできた。それが、彼にとっての小さな自信になっていきました。

「自分が選ばれるか」から「この人を大切にできるか」へ

そこから、彼は少しずつ変わっていきました。急に明るくなったわけではありません。急に恋愛上手になったわけでもありません。性格が別人のように変わったわけでもない。

ただ、「難しいと思うんですけど」という言葉が、少しずつ減っていきました。代わりに、「次はどうしたらいいですか?」「彼女、こういうことが好きみたいです」「次はここに行こうと思っています」そんな言葉が増えていきました。

最初の彼は、自分がどう見られるか。嫌われないか。断られないか。そんなことばかり気にしていました。

でも、デートを重ねるうちに、「彼女はどう思うかな」「彼女は何が好きなんだろう」「次はどこに行ったら喜んでくれるかな」と考えるようになっていきました。

私は、婚活で関係が大きく変わるのは、こういう瞬間なのかもしれないと思っています。「自分が選ばれるか」ばかり考えていた人が、「この人を大切にできるか」を考え始める。そこから、二人の関係が始まる。

3ヶ月後

そして、活動開始から約3ヶ月。彼はその女性と、真剣交際へ進むことになりました。

報告を受けたとき、私は彼に聞きました。「最初に会った日のこと、覚えてます?」

彼は笑いました。「覚えてますよ」「ずっと言ってましたよね」「難しいと思うんですけど、って」

彼は少し恥ずかしそうに笑いました。「言ってましたね」

私は聞きました。「今も、難しいと思います?」少し沈黙がありました。彼は考えてから、こう言いました。

「……やってみないと、分からないですね」

変わったのは、自分を見る目だけ

3ヶ月前とは、同じ人なのに、少し違って見えました。でも実際には、彼は何も別人になっていません。年齢も同じ。仕事も同じ。収入も同じ。性格も同じです。

そもそも彼のスペックは、最初から全然悪くなかったんです。変わったのは、彼自身が「自分を見る目」でした。

人は自信を失うと、現実より先に、自分で自分を諦めてしまうことがあります。「どうせ無理」「僕なんて」「この年齢だから」

そうやって、まだ会ってもいない相手に断られ、まだ起きてもいない未来に傷つき、最後には、自分で自分に不合格を出してしまう。

だから彼の場合、婚活テクニックより先に必要だったのは、「なぜ、自分をそこまで信じられなくなったのか」を一緒に考えることでした。

婚活に、根拠のない自信はいりません。自信満々になる必要もありません。怖くてもいい。不安でもいい。「難しいと思う」そう思っていてもいい。

ただ、自分で自分の可能性まで終わらせないでほしい。

もし今、同じ言葉が出てしまうなら

あの暑い日。汗だくのジャケット姿で、冷たいコーヒーを飲みながら、何度も「難しいと思うんですけど」と言っていた40代の彼。

その3ヶ月後。彼は、自分から「会ってみたい」と申し込んだ女性と、真剣交際に進みました。

彼の条件が変わったからではありません。彼の魅力が、3ヶ月で突然生まれたわけでもありません。最初から持っていたものを、彼自身が少しずつ認められるようになった。

そして、「難しいからやめておく」ではなく、「難しいと思うけど、やってみる」を選べるようになった。それが、彼の婚活を変えました。

もし今、あなたも「難しいと思うんですけど」という言葉が口から出てしまうなら、そのあとに、もう一つだけ問いかけてみてください。

本当に難しいのか。
それとも、傷つくのが怖いだけなのか。

婚活は、自信のある人だけがするものではありません。一人では踏み出せない一歩を、誰かと一緒なら踏み出せることもあります。

難しいかどうかを決めるのは、まだ先でいい。まずは、自分で閉めてしまった扉を、ほんの少し開けてみる。

彼の3ヶ月は、そこから始まりました。

山内 沙織
MAIN COUNSELOR
山内 沙織
忙しく働く30代・40代のための結婚相談所 Aira Marie の代表カウンセラー。婚活の迷いに伴走しています。
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