「私、遊ばれてたんですね」ボロボロだった彼女が、笑顔で婚活できるまで
人生を変えるのは、カウンセラーではありません。
勇気を出すのは、いつでもあなた自身です。
彼女と初めて会ったのは、友人たちとの食事会の席でした。
初対面でしたが、たまたま席が近かったこともあり、少しお話をしました。仕事のことや、最近あったこと。本当に他愛もない話です。
彼女は笑っていました。こちらの話にもきちんと反応してくれるし、周りにも気を遣える女性でした。
でも、なぜか気になったことがありました。ふと会話が途切れた時に見せる表情が、とても辛そうだったんです。
何かあったのかな。そう感じました。
でも、初対面です。こちらから踏み込むことではないと思い、あえて触れませんでした。その日は最後まで軽い話をして、「今日はありがとうございました」と挨拶をして別れました。
連絡先も交換していません。だから、その後また彼女と話すことになるとは思っていませんでした。
半年後、「話を聞いてほしい」と連絡が来た
それから半年ほど経った頃です。共通の知り合いを通じて、彼女から連絡がありました。
「少し、話を聞いてほしいです」
その言葉を見た瞬間、半年前に見た彼女の表情を思い出しました。
後日、改めて彼女と話すことになりました。久しぶりに会った彼女は、やっぱりどこか疲れているように見えました。
最初は近況や仕事の話をしていましたが、少しずつ、ある男性との恋愛について話し始めました。
彼女は、その男性のことが本当に好きでした。ただ、話を聞いていくと、彼女自身もずっと、「何かがおかしい」と感じていたことが分かりました。
連絡は来る。会えば優しい。一緒にいる時は、大切にされているように感じる。でも、将来の話になると曖昧になる。そして時々、他の女性の影を感じることがあったそうです。
彼の車に乗った時、自分のものではない香水の匂いがすることがあった。一度ではありませんでした。
「この香水、誰のだろう」
そう思った。聞こうと思ったこともあったそうです。でも、聞けなかった。聞いてしまえば、今まで信じていたものが壊れてしまうような気がしたからです。
それ以外にも、連絡が取れない時間があったり、会える日が彼の都合ばかりだったり。
一つひとつなら、いくらでも理由をつけることができました。仕事が忙しいのかもしれない。たまたまかもしれない。香水だって、誰かを車に乗せただけかもしれない。
「私が考えすぎなのかな」
彼女は何度も、自分の中に生まれた違和感を、自分で打ち消していました。
本当は、気づいていた
話を聞きながら、私は聞きました。
「その時、本当は気づいてた?」
彼女はしばらく黙っていました。そして、「……たぶん」と答えました。
「でも、認めたくなかったんだと思います」
その言葉が、とても印象に残っています。
人は、何も知らないから
傷つくとは限りません。
本当は心のどこかで気づいている。でも、好きだから信じたい。大切な人だから疑いたくない。
自分の感じていることが本当だったら、今まで信じてきた時間まで全部否定されてしまうような気がする。
だから、知らなかったのではなく、知るのが怖かったのかもしれません。
「友人には相談した?」
私は彼女に聞きました。「友人には相談した?」
彼女は少し黙ってから、「最初はしてました」と答えました。
でも、話をすればするほど、「その人、大丈夫?」「やめた方がいいんじゃない?」そんなことを言われるようになったそうです。
もちろん友人たちは、彼女を心配して言ってくれていたのだと思います。彼女自身も、それは分かっていました。
でも、「好きな人を悪く言われるのが、辛かったんです」そう話してくれました。
だから、だんだん相談できなくなった。聞かれても、「大丈夫だよ」と答えるようになった。本当は全然、大丈夫ではないのに。
- 一人になると不安になる
- 連絡が来ないとスマホを見る
- 会えれば安心する
- でも、別れた瞬間からまた不安になる
- 誰かに相談すれば、好きな人を否定される。だから話せない
気づけば、一番辛い時に、一番誰かに話を聞いてほしいはずなのに、誰にも話せなくなっていました。
そして彼女は、ぽつりと言いました。
「私、遊ばれてたんですね」
その言葉には、彼への怒りよりも、自分自身への悔しさが滲んでいるように感じました。
私は「これからどうしたい?」とは聞かなかった
私はあえて、「これから、どうしたい?」とは聞きませんでした。
今の彼女にそれを聞いても、きっと答えられないと思ったからです。好きだった人を信じられなくなり、自分の判断にも自信を失っている時に、未来なんて簡単には考えられません。
だから私は、違うことを聞きました。
「20代の頃は、どうしたかった?」
彼女は少し驚いた顔をしました。しばらく考えて、「普通に結婚すると思ってました」と答えました。
好きな人と結婚して、一緒にご飯を食べて、休日には出かけて。特別な生活じゃなくていい。好きな人と家族になって、安心できる場所をつくる。
20代の頃は、そんな未来が自分にも普通に来ると思っていたそうです。
でも仕事を頑張り、いくつかの恋愛をして、傷ついて。いつの間にか、昔思い描いていた未来を考えること自体が少なくなっていました。
私はその日、結婚相談所への入会を勧めませんでした。彼と別れるようにも言いませんでした。
誰かに言われて別れたところで、彼女自身が決めなければ意味がないと思ったからです。
ただ、話を聞きました。
数ヶ月後、彼女から連絡が来た
それから数ヶ月が経った頃。彼女から連絡がありました。
「彼に別れを告げました」
彼女自身が決めて、彼に別れを伝えたそうです。そして、「ぜひ、お世話になりたいです」そう言ってくれました。
嬉しかったです。ようやく彼女が前を向こうとしている。それなら全力で応援したい。そう思いました。
でも、その時、彼女には辛い言葉になるだろうと思いながらも、私はあえて聞きました。
「彼のこと、ブロックしましたか?」
彼女は、「してません」と答えました。
「彼から連絡は来てる?」「来てます。でも無視してます」
私は彼女に伝えました。「それだと、私はあなたの婚活をサポートできない」
彼女は黙りました。少し厳しい言葉だったと思います。でも、ここだけは曖昧にしてはいけないと思いました。
私は続けました。
「これからお見合いをして、誰かと出会って、交際に進むかもしれないよね。そして、その人があなたのことを真剣に考えてくれた時に、元彼から今も連絡が来ていると知ったら、その人はどう思うかな。一度、相手の立場になって考えてみて」
無視しているから大丈夫。もう会っていないから大丈夫。そういう問題ではないと思うんです。
新しく出会った人に真剣に向き合ってほしいなら、自分自身も、その人に真剣に向き合う準備をしなければならない。
「勇気を出すのは、あなたです」
そして最後に、私は彼女に言いました。
「私は、あなたの人生を変えることはできない」
カウンセラーだからといって、誰かの人生を変えることはできません。代わりに決断することもできない。代わりに過去を断ち切ることもできない。
でも、「あなたが変わろうとするなら、私は全力でサポートします」
そして最後に、
「勇気を出すのは、あなたです」
そう言って、電話を切りました。
その後、彼女は自分自身で決断しました。過去に区切りをつけ、婚活を始めました。
これが、20代の頃の彼女の笑顔なんだ
もちろん、婚活を始めたからといって、すべてが順調だったわけではありません。
お見合いの前には緊張します。相手のちょっとした言葉が気になることもあります。過去の経験があるから、男性を信じることが怖くなる瞬間だってあります。
それでも彼女は、一つひとつのお見合いと向き合うようになりました。うまくいかなければ一緒に振り返る。そして、また次へ進む。
そんなことを繰り返していくうちに、少しずつ彼女の表情が変わっていきました。
そして今。彼女は婚活を楽しんでいます。本当によく笑うようになりました。お見合いの話をする時も、とびきり明るい笑顔を見せてくれます。
その笑顔を見た時、私はふと、初めて彼女と会った日のことを思い出しました。
友人との食事会。隣の席で笑っていたけれど、ふとした瞬間、とても辛そうな顔をしていた彼女。あの日とは、まるで違う笑顔でした。
そして思いました。きっと、これが20代の頃の彼女の笑顔なんだ。
まだ誰かを疑うことを覚える前。「いつか好きな人と結婚して、幸せになりたい」そんな未来を素直に思い描いていた頃の彼女。
私は、その笑顔を見て確信しました。
婚活を始めたから笑えるようになったのではないと思います。彼女自身が、もう一度、自分の人生を歩くことを決めたから、笑えるようになったんだと思います。
人生を変えるのは、最後は自分自身
結婚相談所の仕事をしていると、「私を結婚させてください」と言われることがあります。
でも、私たちにできることには限界があります。代わりにお見合いはできません。代わりに誰かを好きになることもできません。過去を断ち切ることも、代わりにはできません。
人生を変える最後の一歩は、やっぱり自分自身で踏み出すしかないんです。
ただ、その一歩を踏み出そうとしている人の隣にいることはできます。
- 迷った時に一緒に考える
- 怖くなった時には話を聞く
- そして必要なら、時には耳の痛いことも伝える
それが、私たちカウンセラーの仕事だと思っています。
もし今、過去の恋愛から抜け出せずにいる人がいたら。無理に未来を考えなくてもいいと思います。
「これからどうしたい?」その答えが分からないなら、少しだけ時間を戻してみてください。
20代の頃のあなたは、どんな未来を思い描いていましたか? どんな恋愛をして、どんな人と結婚して、どんな顔で笑っていたかったですか?
過去は変えられません。私たちにも、あなたの人生を変えることはできません。
でも、あなたがもう一度、自分の人生を歩こうと決めたなら。その時は、全力で隣を歩きます。
勇気を出すのは、あなたです。
でも、その先まで一人で歩く必要はありません。